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見てみて見まくる
大御所
先日、20世紀のころスタッフだったカメラマン氏がスタジオへ撮影に来られました。ライティングのセット組みはアシスタントさんに任せ、女優さんがメイクルームから出てくるまでの間、彼は編集さんや関係者の方そっちのけで一人その日の撮影とはまったく関係のない海外フォトグラファーのポートフォリオサイトを見ていたそうです。「いいな~これ」とか独り言を言いながら。
スタジオに入ったスタッフからその話を聞いた僕は、その安定感に頬がゆるんでしまいました。彼が何かカッコいい写真を見つけニコニコしながら「いいな~」とつぶやくのは昔からのこと。その変わらない彼の姿が懐かしかったからです。
現役スタッフからすれば、自分の生まれる前からカメラマンとして多くの実績を積んでこられた人ですから、スゴ過ぎてよくわからない”大御所”のような存在なのかもしれません。でも、僕は知っています。彼は昔から相変わらず、カッコいい写真を見ることが大好きな好青年なのです。
見てみて見まくる
たとえばロケハン中、「ここから撮れば気持ちいい」って立ち位置、視点を見つけられる嗅覚。
ファインダーをのぞいて「さすが!」と言わせるフレーミングにビシッと決められるセンス。
画面の中の何かに違和感やむずかゆさを覚える感覚。
とりあえず撮ってみた画像を見て、もっとこうした方が良くなると気付ける感性。
そのすべては何千何万回と繰り返すことにより出来るようになったクセや勘のようなものです。
だからこそ、ありとあらゆるビジュアルをみて、自分の視覚的センスを育むことが大切だと思うのです。スタッフのみんなには若いうちの今だからこそ、写真を撮っていくと同時に目で見る楽しみを自分の日常生活に取り入れることをおススメします。
後悔
「若い今のうちに、いろいろな良いものを見ておいた方がいいよ。写真だけじゃなく。絵画でも、映画でも、ファッションでも、何でも。今はわからなかったとしても、良いと言われるものは何でもね。」
僕が若かったころ、僕より遥かに年長の方にしみじみアドバイスされた言葉です。
「そーなんすか? そんなもんすかねー」
当時の僕は生意気なひねくれ者だったので、素直にはその言葉を聞き入れなかったと思います。
「今になってさー、田辺くんくらい歳が若くて頭が柔軟なころにもっと多くの良いものを見ておけば良かったって後悔するんだよ。今さらどーしようもないけどね」
その年長者の素直な気持ちから紡がれた言葉が、未だに僕の頭の片隅にこびり付いています。
そして、今。その教えを真に受けなかった自分への反省もあり、僕はうちの若いスタッフに同じアドバイスをしています。
「・・・もっと多くの良いものを見ておけば良かったって後悔してるよ。今さらどーしようもないとは思ってないけどねw」
相変わらず、ひねくれ者ではあるのですが。