• コラム

学生のうちにやっておくべきこと

はじめに

「学校にいる間にやっておいた方が良いことを教えてください」

学生の方からよく聞かれる質問です。

僕の答えは「人目旅」。ただ、その時の状況によってはこの意味をしっかりお伝えできず、かいつまんでお話せざるを得ないことがあります。そこで、改めて詳しく書くことにしました。

 

そもそも写真ろん

「写真」って、カメラマンでも写真家でもフォトグラファーでも、アーティストでもプロフェッショナルでも、被写体に対してのその人ならではの視点を提示するものです。どこから撮るか、どう撮るか、どの瞬間を切り取るか、どう見せるか、それがカッコいい写真、素敵な写真、完璧な写真となるわけです。

だから、プロやアーティストとして生計を立てられるようになることを目指す人は、他人(ひと)がそこにお金を出してくれるレベルの“自分ならではの視点”を持つ必要があります。

“自分ならではの視点”を持つには、確固とした自分なりの価値観や美感、カッコいい感がなければなりません。

そのために必要なことはグラフィカルなアイデンティティの確立、これにつきます。

(本当はビジュアル的なアイデンティティと言いたいのですが、日本ではビジュアルアイデンティティという言葉が主に企業広告やブランディング的な意味合いに使用されるので語弊をさけるため使いません)

そのアイデンティティ確立のために必要なことが「人・目・旅」なのです。

 

人・目・旅

普段の人間関係から離れ、老若男女、国籍・人種を問わず、いつものコミュニティーの延長線上では会うことのない人と会いコミュニケーションをとってみる。その方々の人となりや生き方考え方をそれぞれ心に留める。一人、二人ではなく、10人、100人という規模で。

写真に限らず、美術作品、映画、自然など、目が感動する視覚的に優れたもの、カッコいいもの、キレイなものを見まくる。そこから得られる感情の動きを心に留める。歴史的に評価されている作品は好き嫌いに関わらず見ておく。ネットの液晶画面だけでなくオリジナル作品も見る。見る。見る。

観光旅行的パッケージツアーではなく、できればなるべく長期間の旅や滞在をする。雨風しのげてゆっくり寝られる部屋、美味し食べ物、通じる言葉に不自由するような場所や環境にも臆することなく行く。

 

そのメリット・効能

人との出会いを通して、これからの人生のメンターと知り合える可能性があります。何よりも人を見る目が養われ、世の中には多種多様な生き方があることを体感できます。そして気付けば、コミュニケーション能力が以前より上がっているはずです。

 

見まくることによって、ビジュアル的な感性が養えます。小説家や詩人は言葉の感受性が繊細です。ミュージシャンや音楽家なら音やコードやリズムにこだわりが強いはずです。カメラマンなら当然ビジュアル的な感性が豊かで繊細であるべきですから。カメラはシャッター押せばとりあえず画像が写ってしまいますが、感性を磨かなければただの素人写真ですから。

 

旅を通して、普段、当たり前のようにあるから気付かないことのありがたみを知り、世界には様々な価値観や生活があることを知ることで、自分の人種・国籍・ホームグラウンドを客観的に理解することができます。生きていくことに頑張ることで、生きる力を養うこともできます。何より自分自身のアイデンティティの確立に効果的です。

 

最後に

想えば僕がマネージャーになったのは「人・酒・旅」だったからのような気がします。だからきっと、「人・目・旅」ならカメラマンにグッと近づけるはずです。

もう学生ではないですけど、外苑のスタッフのみんなには夏休みの9日間を有意義に使ってほしいです。今さらステイホームなんて言わせませんのでそのつもりで。

 

 

 

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