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写真を撮ろうよ
スタッフがカメラマン氏のロケアシで同業他社スタジオさんに行ったときのことです。
セッティングや撮影の合間にそこのスタッフさんと雑談を交わす中で、こちらが外苑スタジオのスタッフだということを知ったスタッフさんが言ったそうです。
「外苑(スタジオ)さんって、スタッフはみんな作品撮らなきゃいけないんですよね?」
「え、あ、はい、そーですね」と答えるうちのスタッフ。
すると、親しみ込めつつ同情するように「大変ですねー」と言われたそうです。
「あーべつに撮りたくて撮っているだけなのでー。というか、作品撮りのためにスタッフみんながスタジオの取り合いになるので、そちらの方が大変なんですよーw」
スタッフはそう返したそうですが、それ以上会話は弾まなかったそうです。
なぜ、このスタジオではスタッフに作品撮りをしてもらうのか。
その理由は、過去の僕の「教訓」と「体験」にあります。
「教訓」とは、僕自身が先輩、同期、後輩、知り合い、そしてこのスタジオの歴代のスタッフを見てきて知り得たこと。それは「時間がない」とか「忙しい」とか「疲れている」とか、もっともらしい理由でシャッターを押すことから遠ざかっている人は、何だかんだいって結局カメラマンにはならないという事実を知ったから。
そして「体験」とは、このスタジオにマネージャーとしてきてまだ間もない頃。その当時のスタッフの中にTくんというムードメーカー的スタッフがいました。まわりのスタッフから一目置かれる存在の彼は、とにかく楽しそうに写真を撮り、毎週のように自身の作品撮りでスタジオを使っていたのです。
その後Tくんはスタジオを出てロンドンに渡り、超有名だったファッションフォトグラファーのアシスタントとなります。それから数年後、彼は文字通り世界をまたにかけるフォトグラファーとなりました。
それだけではありません。その当時のTくんと同期のスタッフのほとんどもフォトグラファーとして活躍するに至ったとのです。
そんな彼ら彼女らが集まったスタジオのOB&OG会でのこと。その中のだれかが言った言葉が、僕に大いなる気づきを与えてくれました。
「いやーオレ、Tちゃんがいなかったらカメラマンになれてなかったと思うんですよ。スタジオの頃、Tちゃん見ていて、写真って楽しかったんだなー撮影って楽しんでいいんだなーって気づかされましたもん。ホント彼のおかげです。みんなあの頃の連中はそうだと思いますよ」
この2つの出来事から、僕は「写真を楽しく撮れる自分になるために撮り続ける」ことの大切さを知りました。
それをこのスタジオのコンセプトとすること20数年。結果的にこのスタジオ出身のOB&OGが多くフォトグラファーとして活躍しているのは、みんなが日々試行錯誤しながら写真や撮影を楽しめる自分を手に入れたからに他なりません。
いつも言っていますが、僕は1mmもすごくありません。撮り続けて楽しく撮る自分を手に入れた人たち一人ひとりがスゴイのです。
自分が何を撮りたいのかわからなくなってきた?
自分はホントに写真が好きなのだろうか?
まずは自分が楽しむこと。かしこまるらず、難しく考えずに。
その上で他人に喜んでもらうこと。スタジオこそ、人に喜ばれる写真の模索と研究を思う存分できる場所ですから。
みんなで楽しく撮って、楽しく競い合い、楽しく文句言い合って、みんなにも自分にも負けないように楽しく意地を張る。そうやって、良きライバルとしてお互い切磋琢磨しながら競い合っていけば、独りで頑張るよりグーンと高みにいけるから不思議です。
もちろん、将来おのおのがカメラマンとしてどれだけ売れるかは重要です。
でも、切磋琢磨し合った仲間たちは、やがて気付けば心許せる無二の仲間たちとなります。そんなかけがえのない宝物を手に入れることができるのですから、楽しく意地を張らない手はないと思うのです。
みんな、写真を撮ろうよ。