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仕事と人間性の優先順位

スタジオにいると、お客様の話が色々と聞こえてきます。例えば、撮影をどのフォトグラファーに依頼するかを決める立場にある方からの「結局、最後は人間性だよねー」という声。最近、よく耳にするようになりました。

 
でもこれ、スタジオスタッフレベルの人が鵜呑みにすると大変危険です。まだ、フォトグラファーではやっていけないからスタジオに勤めているのに、やるべきことをやらずに人間性にこだわるのは本末転倒。これって、さすがプロは違うねって言われるクオリティーの成果物をコンスタントに出せるようになってからの話ですから。

どこの国も、どんな分野も、プロフェッショナルの世界ではクオリティーの高い仕事が出来るってことが大前提です。それに比べたら、人間性なんておまけのようなものと考えておくべきです。

仕事が出来た上で、人間性も優れていれば一緒に仕事をする人は楽だし、人間性に難があるなら「ま、仕方ないか。」って程度のことです。やんちゃがまかり通っていた昭和の頃と違い、令和はみんな大人なのです。

もちろん、撮影案件によっては、一緒に仕事をして楽な人や楽しい人が好まれるのは事実です。だから、そのラインで人間性やコミュニケーション力を優先的に磨くのも戦略として大いに有りだと思います。

でも、フォトグラファーを目指すためにわざわざスタジオに入ったのなら、まずはその環境を活かし「仕事が出来る」って言われるために必要なことに優先して取り組むべきです。この世界はスタジオに勤めているだけで、自分は頑張っていると思い込む「幸せな甘ちゃん」が通用するような世界ではないのですから。

僕のいるスタジオのOB&OGに限らず、フォトグラファーの写真が好きで、その人のアシスタントに就いたと言う人は大勢います。その後、結局は耐えられずに辞めてしまった人の多くが「怒られてばかりだった」とか「認めてくれなかった」という言葉を残してこの業界から消えていきます。まったくバカげた話です。師匠は、どんな出来損ないでも愛してくれる『親』ではなく、『ビジネスパートナー』です。心が通じ合うのは、アシスタントがアシスタントワークで師匠の信頼を勝ち取ってからの話です。

 

仕事が出来るって、自分が戦っていくために必要な武器を磨くってことです。あらゆる場面に対応できるためにも、武器は色々持っているに越したことはないし、丈夫で高性能が良いに決まっています。スタジオという環境にいるうちは、人間性なんかに甘えることなく、スタジオ後に戦っていける術を身につけ、磨いておけってことです。

こんなこと書くと、外苑スタジオって軍隊みたいと言われそうです。でも、考え方が甘いがために、理想を実現しようとする試みが、その人の黒歴史になってしまうよりよっぽどマシだと思うのです。私は私の知っている人が消えていくのを見過ごせない性分なので、言わせて頂いているのであります!敬礼!

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