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採用する側とされる側。そこにある矛盾

企業が求人広告を出すとき、求職者側の人権を尊重することは必須です。何を当たり前のことを!と思われるかもしれませんが、比較的小規模の企業サイトでは、未だに求人する側の自由が幅を利かせているのを散見します。

以下は、最近目にした、ある有名店舗の求人広告からの抜粋。

 

 

私達と一緒に挑戦してくださる○○○を募集しています。

自発的に思考でき学びと向上心に長けたやる気の有る方、前向きで明るい方。

工夫と表現力のあるタレント性に富んだ方。

笑顔とホスピタリティに溢れた方。

経験者優遇ですが、未経験の方でも学ぶ意欲が高く、ネガティヴな方でなければ大歓迎です。

興味の有る方は写真の添付された履歴書と自己PRを下記のメールにお送り下さい。

 

 

これ、リクナビなどの大手求人広告サイトだったら、絶対に掲載不可能です。今どき、年齢や性別、国籍などを限定した求人募集が認められないのは当たり前。それだけでなく、外見や性格も求職者側の権利、人権として法律がその保証をしているからです。

だから、先ほどの例でいえば、「前向きで明るい方」はNGワードとなります。「タレント性に富んだ」もNG。「笑顔溢れる」も。「ネガティブでなければ大歓迎」なんて絶対NG。

 

僕も求人させて頂く側の立場ですから、求人する側の切望感は理解できます。きっと、これを書いた方は、過去に求めているタイプではない方を採用して懲りた経験をお持ちなのでしょう。でも、日本国憲法に「すべての国民は、個人として尊重される。」と書かれている通り、求職者は個人として尊重されて然るべきです。

 

 

ただし、ここに大いなる矛盾があるのです。

 

採用する側には「採用の自由」があるので、より多くの人に門を広げているのはあくまでも建前。結局は、自社の求める基準に沿って採用するだけですから。先ほどの有名店舗の例でいえば、色々な方が面接に来られるとは思いますが、NGワードの人こそが優先的に採用されるのは当然のことです。

 

今、多くの企業で、本当は採用とは程遠い人がその求人に期待し、自分のどこに問題があったのかわからないまま、採用を見送られています。見送られた原因を教えられれば、次につながる経験となるかもしれないのに、そんなことを教えてくれる企業はほとんどありません。

その結果、自分の何が悪いのかもわからぬまま、ただただ社会からの疎外感を感じている、という人は少なくないと思います。

 

弱肉強食の世の中だから仕方ない? 悪いのは世の中から外れているその人自身?

 

それって、なんかつれなくない? 器ちっちゃ過ぎじゃない?

だから、僕はスタジオの面接で、その人のため伝えたほうがいいと思ったら、時間が許すときは正直にお話しするようにしています。現時点では採用に至らない理由を。よろしければ、また来てくださいって気持ちで。

 

それを聞いて、涙流されて感謝してくださる方もいれば、こんなところに用は無いから一刻も早く去りたいって方もいます。過去には、そうやって数年後にまた来てくださった方もいましたし、3度目の面接で採用させて頂いた方もいました。

 

そのうち、恨みを買って刺されるかもしれませんが、その時はその時だと思っています。と、いっても、僕も妻子ある身。下の子なんて、まだ小学生です。

もし仮に、眉毛とまぶたと鼻と唇にピアスが入っていて、顔の半分にタトゥーの人が、熟れ過ぎたイチゴのような舌でナイフを舐めながら面接に現れたら。

 

刺されたくないので、採用しちゃうかもしれません。その時は、スタッフのみんな、新しい同僚をよろしくね!!

 

 

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