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スタジオにはどのくらい勤めるべきか

「オレなんてスタジオ1年で辞めたよ。就きたい人に連絡して1番就きたかった人につけた。スタジオなんて長く居るもんじゃないよ!」

 

先日、撮影にお越しになったフォトグラファーさんから、スタッフがいただいたアドバイスです。これ、昔からよく耳にする話です。

 

その方自身、スタジオ経験1年でカメラマンになっているわけですから、その選択が正しかったことは間違いありません。たぶん、それだけでなく、自分より長い期間スタジオに居て、ボーっとしていたり、ぬるま湯に浸かってグダグダになっている方々を多く目にしてきたことも、その方の信念の根拠になっているのだと思います。

 

実際のところ、1年どころかスタジオに勤めたことがなくてもカメラマンをやっている方は大勢います。フォトグラファー(写真家・カメラマン)は、スタジオ勤務経験の有無や長短に関係なく、成れる人はなれるし、成れない人は成れないものですから。

ただし!

「え、そーなの? じゃーオレ、スタジオ辞めてもいんじゃね?」と考えたそこのあなた。そんなあなただからこそ、ここで結論付けず、この後も読んで頂きたいのです。

なぜならこれ、そうは問屋が卸す問題ではないのです。

 

スタジオ勤続期間とフォトグラファーになる人の関係(2003年~2012年 外苑スタジオ出身者)

スタジオ勤続期間 カメラマンとして生計を立てている人の割合(%)
入社から6ケ月未満 1%
6ケ月以上12カ月未満 4%
12ヵ月以上18か月未満 9%
18か月以上24か月未満 41%
24か月以上 62%

 上の表は、過去の10年間に僕のいるスタジオに在籍していた方々のその後を調べ、フォトグラファー(写真家・カメラマン)として生計を立てられている方々の割合を調べたものです。対象者のデータが古いのは、スタジオ後数年間カメラマンアシスタントを経たのちに独立する方や、「食べられるようになるまで」時間のかかる方がいるためです。

 

どんな世界でも同じだと思いますが、上を目指す人は、今の自分が次のステージで通用するのか、なんとなくわかっているものです。どこかの段階で意志に関係なく「自分ならやっていける」という確信を持つに至るのです。

 

最初からその確信を持っている方もいれば、1年くらいで持つに至る方、数年でそこに至る方もいます。

その判断を誤る方もいます。

 

自分を買いかぶってしまい、「自分ならやっていける」と思い込んでしまうのです。そのような方は、次のステージで挫折を味わうことと引き換えに、改めて「自分はやっていける」という確信を構築し直さなければなりません。その挫折を乗り越えられるかどうかは、根性とか胆力とか環境とか、その方の覚悟の大きさ次第となります。

 

また、現状から逃げる口実として、『「自分ならやっていける」という確信』を妄信してしまう方がいます。残念ながらそういった方の多くが、次のステージでも高い確率でその現状から逃げたくなってしまうのは、偶然ではありません。

 

だからといって、僕はいつまでもスタジオに居るべきだと言うつもりもありません。知識もスキルもコミュニケーションも充分なのに、次のステージに進む勇気が湧かないために前向きな行動を起こさず、日々スタジオアシスタントを続けているなんて、人生足踏み状態ですから。

表題の『スタジオにはどのくらい勤めるべきか』。

それが0年か、1年か、2年か、3年かは人それぞれ違うものであり、短いからスゴイとか、長いから偉いというものではありません。

 

その答えは、願望や理想の入り混じった意志ではなく、健康的で前向きな精神状態の中で心の奥から聞こえてくる自分の声が「今の自分なら、次のステージでも頼りにされる存在に成れる。」となるまでです。

 

だって、スタジオってその準備をするために存在しているのですから。

 

 

文:田辺 政一  え:きよた ちひろ

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