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スタジオマン(下)

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もくじ

① スタジオマンとは(上)

② スタジオマンは踏み台(上)

③ スタジオマンのメリット(上)

④ スタジオマン適齢期(中)

⑤ 理想的勤続期間(中)

⑥ プロフェッショナルとアーティスト(中)

⑦ スタジオマンに忍び寄るワナ(下)

⑧ スタジオマンになる前に(下)

⑨ あとがき(下)

⑦ スタジオマンに忍び寄るワナ

◆ スタジオから

スタジオの経営的観点からいえば、採用したスタジオマンは出来る限り長く勤めてくれた方が人件費の抑制となります。

 

「一人前」といえるレベルのラインをどこに引くかという問題はさておき、仮にスタジオマンとして一人前になるまでに平均1年がかかるとします。ということは、スタジオ経営陣からすれば入社から1年間は先行投資となり1年後からの売り上げを期待することになります。にもかかわらず、そのスタジオマンに1年程度で辞められてしまえば、それまでそのスタジオマンに掛けた人件費はまったくのムダということになります。

 

経営陣にとっては1年かけて育てたスタジオマンには出来る限り長く居続けてもらうことが重要なのです。そのためには、給与を上げるとか、様々な優遇をすることで出来る限り長く居続けてもらうようにします。

 

5年居てくれたらしめたもの、10年なんて最高です。スタジオマンは、そのスタジオの経営上の都合と、自分自身がフォトグラファー(写真家・カメラマン)を目指すためにステージアップする絶好なタイミングはまったく別物だということを決して忘れるべきではありません。

 

◆ フォトグラファーから

スタジオに入り仕事にもある程度慣れてくると、仕事上知ったフォトグラファーやそのアシスタントさんから直アシへの誘いを受けるようになります。初めて誘いを受けたときは、自分の頑張ってきたことが認められたわけですから、自信も湧くし、うれしいものです。

 

ただ、ここで注意をしなければならないのは、誘われた理由です。それはあくまでもそのスタジオマンが提供してくれるであろう仕事のクオリティ―(とその期待値)を評価してのことであって、そのスタジオマン個人を愛したからではないのです。

 

その時点では、あくまでもビジネスライクでしかありません。誘ってくれたフォトグラファーから愛や親身な態度を受けられるのは、直アシになったあとの貢献と年単位の時間次第となることを忘れてはいけません。

 

恋は盲目です。自分なんかに声をかけてくれたことに喜び、本当にその人でいいのかという問題を深く考慮しないまま直アシとなり、後戻りのできない段階になって後悔する人は今も昔も少なからずいます。

 

学生の頃の失恋は、振り返れば甘酸っぱい想い出となりますが、大人の失恋は人生を変えるほどの黒歴史になりかねません。スタジオマンは、写真や仕事のスキルだけでなく自己肯定感も高めておく必要があるのです。

【カメラマンアシスタント(直アシ)についてはこちら】

⑧ スタジオマンになる前に

スタジオに入ってプロの現場をいろいろ見て、その上で自分の方向性を決めていきたいという人がいます。おススメしません。

 

その手の人で実際スタジオ入社後に自分の方向性が定まっていった人を僕は見たことがないからです。定まらないまま、何者にもなることなくほとんどの人は消えていきます。

 

とりあえずYouTubeをチェックする人、スマホがないと間が持てない人と同じです。あふれるほどの情報の中に何か答えがある気がしますが、何もありません。1年、2年とただ時間だけが過ぎていきます。

 

逆に、自分は将来絶対にファッションフォトグラファーになりたいと言ってスタジオに入った人が、スタジオを出た後物撮りのフォトグラファーになったという例は数多く見てきました。まずは目標ありき。目標がなければ前に進めません。進まなければ乗り越えるべき課題にも出会えません。

 

課題を乗り越えていくからこそ、自分が本当に進むべきことが見えてくるものなのです。「傍観者」ではなく「11歩」。とても大事な心掛けです。

あとがき

世界的にみて、カメラマンアシスタントとは別にスタジオマンという職種が発達しているのは日本くらいです。だから、世界一スタジオマンについて詳しく書かれた記事を目指しました。

 

僕は業界歴37年。営業写真館からスタートして、プロラボ、スタジオマン、カメアシ、カメラマンときて現職28年目。多くのスタジオマンを経てカメラマンとなる人、ならない人を見てきました。

 

僕のいるスタジオに限る話ではなく、一般論としてのスタジオマン。僕が書かずして、誰が書くのかって思ったからです。

 

現役スタジオマンの方にはもちろんのこと、これからスタジオマンを始めようとする方のお役にも立てれば幸いです。

 

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