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黄金比

「もう少し、フレーミングとかを工夫する意識を持ってもいいんじゃない? ファインダー中央のピント合わせるところに被写体持ってって、そのままシャッター押してない?」

僕がそう言うと、スタッフは「構図ですか。」と言ってしばらく黙した後、自信無げにボソっとつぶやきました。

「黄金比ってやつですかね?」

 

黄金比!

懐かしき言葉、黄金比。

その彼の一言で思い出しました。僕もグラフィックの勉強を始めたばかりの若い頃、「構図」というものを本(ネットはありませんでした)で調べていった結果、「黄金比」という言葉にたどり着きました。

 

黄金比とは、もっとも美しいとされるタテ:ヨコの比率のことです。古代ギリシアの頃から伝わる神の比ともよばれるものだとか、なんだとか……。

「構図」というものをどう捉えればいいのかも、何なのかもわからなかった僕にとって、この黄金比はそれを理解するための手掛かりになるに違いないと思ったのです。でも、結局のところ黄金比で何かがわかるワケでもなく、確かに美しいかもしれないけど、だから何?って感じではありました。

 

ただ、そのようなシンボリックな言葉とは別の部分で、わからないなりに、色々、何だかんだ試行錯誤はしていました。評価の高い絵画やデザイン・写真などを片っ端から見たり、暗室でトリミングを考えたり、ファインダー覗きながらフレーミングに迷ったり。

すると、そのうち何となく四角いフレームの中のバランスが気持ち悪かったり、退屈だったり、不安だったり、カッコ良かったりと感覚的に捉えられる何かを感じるようになっていきました。やがて、それは自分の中で、言葉ではうまくは説明できないけど、理屈と同じかそれ以上の強さで主張する何かとして、認識できるようになっていきました。

 

今では、僕にとっての「黄金比」は人に説明するには便利で説得力のある風な言葉ですが、それ以上の何ものでもありません。はっきり言ってどーでもいい言葉です。

最初はその捉え方すらわからなくても、あれやこれやとやりながら、あっちこっち手を出して、なんやかんややっていけば、感覚的に捉えられるようになってくるものって実はたくさんあります。僕のようにいい加減にやるのではなく、もっとしっかり試行錯誤に頑張っていけば、人はもっと高いところまで行けるに違いありません。

理屈は調べたり考えたりして掴むものですが、潜在意識とか感性というものは繰り返せば繰り返すほどに強まっていくものだそうです。あきらめずに続けるべき理由は、続けてみなくちゃわからないけど、確かに絶対あるのです。

 

あとは、情熱のみ。

 

みんな、頑張れよ!

 

 

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