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金融マン VS カメラマン

 

今どきの中学生に、言わせて頂きたいことがあります。「お金はもちろん大事だし、お金が無ければ多くのことが何もできないのは事実。ただし、次世代に尊敬される生き方、若い人たちを勇気づけ迷う人たちに進むべき道を指し示す生き様も、結構カッコイイんだぞ。しかも、その気になれば結構稼げるのだ。ニャロメー。」

 

「13歳のハローワーク」というサイトをご存知ですか? 作家、村上龍さんが2003年に出された同名の本を元にしたサイトです。中学生を対象に、将来自分が就きたい職業をイメージできる、とても良いサイトだと思います。その中に「人気職業ランキングTOP100」というページがあります。字の通り、サイト閲覧者が検索する職業を上位100位までランキングしたものです。残念ですが、少し前から「カメラマン」も「写真家」もランク圏外です。(と、思っていたら先月は97位に上がっていました。たぶん、僕が何度も見ていたからです。)ちなみに、1位は最近ず~っと「金融業界」です。

 

その金融のメッカ、アメリカのいわゆるウォール街には上を目指してがむしゃらに働く方がいるそうです。ただし、その目的は多くの場合、人生早々にリタイアしても遊んで暮せるだけのお金を作るためだと聞きます。言葉は悪いかもしれませんが、人をうまく出し抜くことができれば合法的に莫大な財産を築くことができる。もちろん、金融関係の仕事に就かれている方のほとんどは、地道でまっとうな方々ばかりです。信用が何よりも大切な世界なので当然のことです。人生早々にリタイアなんて、本当にごく一部の限られた人たちだけです。

 

ところで、話しは全然変わりますが、新進気鋭の写真作家からこんな話を聞きました。 『(写真)作家の大御所連中が集まるパーティーに呼ばれたんで、ケンカ売ってやろうと思って意気込んで行ったんですけどね、皆さん人間的にとっても素敵ないい人ばかりで・・・尊敬しかできねえじゃねーか、バカヤローって感じでしたよ(笑)。』

 

また、スタジオのスタッフからはこんな話も聞きました。彼が、今年70歳となる超大御所カメラマンのスタジオに入ったときのことです。カメラマンを目指すスタッフの彼が教えを乞うと、超大御所は様々なことを簡潔でありながら示唆に富む言葉で優しく語ってくれたそうです。『写真は科学。撮るのは文学』、『そこにあるもの全てが、銀メッキだと考えるんだ。全部反射するんだよ。それを考えて撮ればいい。』

 

中学生が高収入を期待できる職業に興味を持つのは当然です。自分の能力によっては一攫千金もあり得るってことも夢のある話です。でも、遊んで暮らすくらいなら、生きてきたこと自体が尊敬に値する人生も素敵だと思いますよ。次世代を担う若者たちに、自分の生き様から語れる言葉を持っているって最高にカッコイイです。

 

 

 

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