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素直に明るく楽しむ才能

 

才能。

 

「あの人は、才能があるから、、、」とか、「自分には才能が無いから・・・」という話を耳にしたことがあると思います。

 

例えば、カメラマン(写真家・フォトグラファー)なら、センスがいいとか、写真が上手いとか、コミュニケーション力が高いとか、体が丈夫とか(笑)。

 

最近、僕は「素直に明るく楽しめること」も才能の一つだと知りました。

 

先日、元スタジオスタッフが、フォトグラファーとしてスタジオの撮影に来てくれました。彼は駐車場に車を停めると、ニコニコしながら降りてきて、後輩のスタッフ達に明るく微笑みながら挨拶し、スタジオに入っていきました。

 

数年前、スタジオに入社してきたばかりの彼は、お世辞にも仕事を器用にこなせるタイプの人ではありませんでした。しかも、物覚えが良いわけでもありません。おまけに彼の撮る写真からは、キラッと光る何かを感じることもありませんでした。

 

そんな彼だったので、入社したての頃は当時の先輩達からよく怒られていました。それでもいつも笑顔を絶やさず微笑みながら、スタジオの仕事に一生懸命取り組む彼の姿は、すごく印象的でした。

 

その後、彼はある有名なフォトグラファーのアシスタントにつきます。でも、そこでもやはり仕事が出来るようになるまでには時間がかかったようです。

 

聞いた話では、彼の師匠も彼のアシスタントとしてのいたらなさと写真の下手さに呆れていたそうです。ただ、憎めない彼にある日師匠は言いました。

 

「オレのアシスタントは、今までず~っと2年で独立してもらってきた。でも、お前には無理だ。写真が下手クソ過ぎる。これで出したら、オレが恥ずかしい。だから、お前は4年居ろ。」

 

本来なら、クビでも不思議ではありません。アシスタントワークができなくてクビになることは、この業界では珍しい話ではないからです。でも、彼はクビにならないどころか、「一人前になるまで、もっと居続けろ。」と言われたのです。

 

もちろん、師匠も面倒見のいい立派な方であることは間違いありません。僕は、それに合わせてアシスタントだった彼自身の、“裏心の無い一生懸命さ”が、師匠に「お墨付きを与えられるようになるまで、オレが面倒を見てやる」と言わせたのだと思います。

 

彼は昨年、師匠の元から独立。今ではいくつものファッション誌から撮影依頼の声が掛かる忙しい日々を送っています。

 

先日、スタジオに来た際に、彼がスタッフに話したそうです。「昨日の〇〇〇(テレビ番組)見た?5億円もらったら今の仕事を辞めるかどうかってヤツ。ボクなら、5億あっても辞めないなー。この仕事、お金のためにやってるワケじゃないからねー。カメラマンは、楽しいよ!」

 

素直に明るく楽しむこと。簡単そうで、実はなかなか難しいことかもしれません。ましてや“裏心なく”それを続けるなんて、至難の業と言っても過言ではないかもしれません。「裏心なく、素直に明るく楽しむ。」、心の中の辞書の「才能」のページに加えてみてはいかがでしょう?

 

 

 

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