• コラム

直アシかロケアシか

他社スタジオさんにお勤めの方が、スタジオ後フォトグラファーの直アシに就くか、フリーのロケアシとしてやっていくかを決めあぐねていると聞きました。別に僕に相談してきたわけではないのですが、僕の中ではすでに解決済みの問いです。でも、これまでスタッフに話したことはあっても、公にしたことはありませんでした。そこで、改めて書いてみることにしました。

 

まず直アシは、就く師匠にもよりますが、仕事が出来なくてクビになったり、体よく追い出されてしまったり、想像以上に精神的・体力的にキツくて自ら離脱してしまう可能性があります。その傾向は、売れている師匠であればあるほど高くなります。

 

それに比べればロケアシは格段に楽です。基本的に日雇い仕事なので手離れはいいし、仕事上の責任を求められることはほとんどありません。

 

だから、直アシの精神的・肉体的負荷に耐えられそうもないのなら、直アシはやめておいたほうが無難かと思います。

 

ただし、スタジオ退社後、直アシを選ぶ方に比べると、ロケアシを選ばれた方でその後フォトグラファーになる方はそれ程いません。多くの方が音沙汰なく行方知れずとなります。

 

入り口は楽なロケアシですが、ロケアシをしながらフォトグラファーになることを狙っていくつもりなら、営業も、クライアントから信頼を得る術も、仕事の進め方も、写真のクオリティーの向上も、自分で発見・または開発し、身につけていかなければなりません。

 

世の中には、自分のために頑張ってきてくれた直アシに極意を伝授する師匠がいます。長い間、貢献してくれた直アシのフォトグラファーデビューをお膳立てしてくれる師匠もいます。

 

でも、ロケアシにそれを教えたり、施したりしてくれるフォトグラファーは皆無です。ロケアシとフォトグラファーは、どんなに親しくとも直アシのような人間関係には成り得ません。あくまでも、便利屋稼業とお客さんの関係なのです。

 

また、ロケアシにはもう一つ、自分の足を引っ張る問題があります。それは、アシスタントワークがそこそこ出来る方であればある程、ロケアシ業だけで自分一人充分食いつなげる程度に稼げてしまうということです。そのぬるま湯的環境に満足し、上にいくことを留保、何とな~く楽しく自堕落な日々を過ごしていくうちに、上にいこうとする気持ちが萎えていく人は少なくありません。自分を叱ってくれる存在がない分、自分を律する気持ちがないと、数年なんてあっという間に過ぎていってしまいますから。

 

ある元スタッフは、18歳で面接にきて、19歳でスタジオに入社。縛られることを嫌った彼は21歳でスタジオを出た後、フリーのロケアシとなります。数年後、このままではダメだと強く思うようになり、考え方を改めます。25歳でとびきり厳しくて有名だったフォトグラファーの直アシとなり、30歳で独立。今はバリバリ売れてる人気フォトグラファーです。

 

彼の場合、スタートが19歳と早かったため、やり直しがききました。年齢高めからのスタートだったら、こうはいかなかったかもしれません。

 

だから、僕のいるスタジオに限っては、スタジオ後の身の振り方を決めあぐねているスタッフに対し、余程の覚悟と光るものが見えない限り、直アシに就くことを強くすすめています。それでもフリーのロケアシになろうとする人には、ひとまずお別れを言っています。

 

直アシか、ロケアシか、参考になれば幸いです。

 

 

文:田辺 政一  え:きよた ちひろ

コラム一覧に戻る