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家がつく系職業
「手段の目的化」という言葉をご存知ですか? 目的のために選択したはずの手段が目的になってしまうことをいうものです。この世の中には、普通に存在していることなので、そこに違和感を持つ方はそれほど多くはないのかもしれませんが。
例えば、
〇 よりハイレベルなことを学ぶために大学に行くのではなく、そこを卒業したという事実をつくること自体が目的なので、単位は極力簡単に取れそうなゼミを優先して選ぶ。
〇 自分にとっての幸せは結婚によってのみ得られると信じ婚活に励んではいるが、納得できる好条件の相手を見つけられないまま時だけが過ぎていく。
◯ 愛する国のために、そのリーダーとなった人が、自分の保身のために忖度する部下を重用する。
これって、世の中を上手に生きていこうとする方にとってはごく当たり前のことです。当人からすれば、他人から文句を言われる筋合いの話ではありません。
この春、撮影スタジオにも、多くの方がフォトグラファー(写真家・カメラマン)になることを心に決め、そのために必要な知識や技術をプロの現場で学ぶべく入社してきています。撮影スタジオなら、様々な撮影を見ることが出来、一線で活躍されているフォトグラファーをより身近に学ぶことが出来ますから。
僕のいるスタジオには、そんなスタッフの努力をスタジオ退社後も応援する制度があります。それは、スタジオに2年以上勤めてくれた方に、退社後も作品撮りやライトテスト等でスタジオを優先的に使用することができる『OB&OG資格』というものです。
でも、この資格のために「手段の目的化」のワナにはまってしまうスタッフがいるのです。スタジオの仕事は大変だから、OB&OG資格を所得できるまでは我慢して、2年きっかりでスタジオを辞めよう、という考え方です。
そもそも、知識や技術が足りないから、それを身につけるためにスタジオに入社したはずです。それなら、必要な知識や技術を身につけ、次のステップでもやっていける自信を持てた時点がその人の辞め時であって、OB&OG資格所得はタイミングが合えばラッキー程度の話であるべきです。
資格が得られた在勤2年時には、どこに出てもやっていけるだけのスキルやセンスを身につけているなら、まったく問題はありません。でも、スキルもセンスも第三者がほとんど評価してくれない程度のレベルでスタジオを出てしまうのは本末転倒でしかありません。
プロフェッショナルを目指すなら、更なるステージで自分の存在を認めてもらうためにも、満を持して上に進むべきです。アーティストとかクリエイターとか、表現することをなりわいとしようと考えているなら、そもそも器用に生きようなんて考えは捨てるべきです。
写真家をはじめ「家」の付く系の仕事って、一般的な会社員や公務員とは違います。小説家、音楽家、画家、起業家、書道家、華道家、企業家、武道家……、どれもその人の人生観とか生き様が問われる職業なのです。
政治“家”だから、みんな目くじら立てるんです。「私は政治“屋”さんです。」ってカミングアウトしちゃえば、だれも文句言わないのにって思うんですけどね。
文:田辺 政一 え:きよた ちひろ