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夢の先にあるもの
夢を追うべきか、現実に生きるべきか悩む人がいます。夢追う人を大勢見てきた僕に言わせて頂けるなら、悩むくらいならとっとととことん夢を追えと言いたい。どうせやるなら悩んでいる時間はムダでしかありません。とっとと飛び込んで、あたふたもがき始めろと言いたい。悩むことに悩んでいたいなら、夢なんかとっとと諦めてとことん現実を生きる中に幸せを見い出せと言いたい。
なぜなら、夢はゴールなんかではないから。
多くの夢は上っ面に過ぎません。ほとんどの人は、夢を現実にしていく過程の中で初めて自分の本当の願望を知るに至ります。その願望次第で、夢はいよいよ現実となることもあれば、過去のちょっと恥ずかしい思い出にもなります。
子供のころからちょっとシャイな人がいました。人見知りで人の目を見ることが苦手だった彼は、カメラと出会いその面白さに夢中になります。その後、地元の小さな公募展ではありましたが、応募した作品が優勝したことを機に、将来は人の温かな表情を撮る写真作家になろうと考えるようになりました。
高校を出ると同時に東京に出てきて写真の専門学校に通いました。卒業後は大変なことを覚悟の上で、作家活動を優先するためにどこにも就職せずフリーターで暮らしていくことにしました。
一年後、彼は作品を撮る気が湧いてこない自分に悩むようになります。作家になりたいという気持ちは変わらず持ち続けていましたが、体が撮る気にならないのです。やがて、彼はバイト先から社員にならないかと誘われました。作家として自由に活動できる時間が必要なため本来なら断る誘いでしたが、作品制作に行き詰まっていた彼は気分転換を兼ねて、自分には一生関係ないと思っていた正社員になることにしました。それから10年、彼は当時の夢だった写真作家、その本当の願望を僕に語ってくれました。
「一眼レフのファインダー覗くと、人の顔も直視できるし、カメラ持つだけでなんか違う自分になれるような気がしてたんですよね。でも、バイトで接客やらされたりして、普通に人と話せるようになってきた頃から、自分の中の制作へのこだわりが薄れていったって感じですかねー。今も写真は好きですけど、作品は撮っていないですね(笑)。」
彼の本当の願望とは、人とのコミュニケーションだったのです。彼の写真へのこだわりとは、ある意味自分探しだったのかもしれません。
今、彼は、泣く子も笑う営業写真館のカメラマンです。
自分の本当の願望を知り、その願望に生きることこそが、本当の意味で夢を手に入れるということなのです。