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下積みはブラックか
スタッフのKちゃんに、「今日はマジメで」とブログ記事へのリクエストを頂きました。彼女は、僕がいつも真面目だということを知らないようで、ショックです。
ところで、「下積みとは」とググってみて、ビックリしました。
したづみ【下積み】とは、『いつまでも他人の下に使われて出世できないこと。そういう人。』(デジタル大辞泉より)と、あるのです。
これじゃー、下積みはブラックと言われても仕方ありません。
でも、僕の知る限り、その立場に満足されている方を除けば、出世したいのにいつまでも下積みのままなんて人は見たことがありません。そもそも、もっと上にいきたいから、わざわざ下積むのです。
だから、僕のイメージしていた「下積み」はデジタル大辞泉とは違います。したづみ【下積み】とは、『他人の下で使われることでしか学ぶことのできない、自分の想像を超える何かを得て、ステップアップをするまでの時間のこと。』であるべきだと思います。
一時期のブームで消えていく人を除き、それなりの成功を勝ち得る人は、必ずそれなりの挫折や苦労を経験しています。それを公言するかしないかは、その人のセルフブランディングの問題なのです。
それなりの成功が得られるようになるまでの成長過程において、成り行きで挫折や苦労を味わったのか、下積み期間で集中的に苦労したのかの違いがあるだけです。
ただし、挫折も苦労も下積みも、それ自体を目的にしては意味がありません。ロールプレイングゲームと違って、挫折値と苦労値が一定量に達したからレベルアップというわけにはいかないのです。
僕はこれまで、多くのカメラマン(・写真家・フォトグラファー)志望の方を見てきました。残念ながら人は、その才能においてまったく平等ではありません。
僕の知っている天才は、ごく普通に撮っているようにしか見えないのに、撮られた写真はなぜか超絶カッコいいのです。なのに、カメラ機材やライティング等、あとでまったく同じに再現できるものに特別感はまったくありません。
だから、普通の人がこの理解不可能な才能に近づくことはまず無理なのです。知識や、コツさえ知っていれば出来るというものでもなければ、ある程度の訓練を積めばいいような類のものでもないからです。
それでも、どうしてもその稀に見る天才のような写真を撮れるようになりたいとか、少しでもその才能に近づきたいと願う人は、「下積み」ポジションを利用します。何のことはない、いわゆる「アシスタント」という立場のことです。
その師匠の身近にいることで、師匠が何を感じ、何を考え、どう行動しているのかを学ぶだけではありません。視点、呼吸、一挙手一投足を間近に感じられる環境の中で、今まで自分の中にはなかった視点や感覚・考え方に気付くことができた分だけ、師匠に近づくことができるのです。
今年の9月までスタジオスタッフだったHくんは今、日本でも有数の忙しさと言われるフォトグラファーのアシスタントについています。あれから3か月、休日はまだ一度もないそうです。彼もいずれは兄弟子たちのように、売れに売れてるフォトグラファーとなることを応援せずにはいられません。
広告写真業界では知らない人がいない程有名な方のアシスタントを7年務めたNさんは、当時いつも睡眠3時間程と言っていました。今では誰もが目にするCM撮影を数多く手掛ける人気の映像カメラマンです。
その先に本人の目的や野望があって、そのために必要な境遇を自分が笑っていられる限り、それはブラックではないと思いますし、それを人に言われる筋合いはないと思います。もっとも、乗り越えた後は、誰もが二度とは戻りたくないものではあるのですが(笑)。