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ホリの上にも三年
独立目指すか、直アシになるか
スタジオ業界を広く知る方から聞いた話です。最近はどこのスタジオのスタッフさんも、インスタ経由で撮影依頼が自分に来ることを願い、スタジオ後に直アシに就くという選択肢を選ばない人が増えているとのこと。
このスタジオだけに限らない、撮影スタジオ業界全般の傾向だそうです。スタジオに長く居留まってくれるスタッフが増えれば、スタジオ経営は有難いのですが、、、
どうりで、今カメラマンの直アシをやっている方は頭をかかえるはずです。次の自分の後釜が見つからないことには、師匠の下から独立出来ないわけですから。
もちろん、スタジオスタッフさんの気持ちはわからないでもありません。直アシに就いたって、カメラマンになれる保証はないわけですし、それにも関わらず多くの場合直アシの待遇は厳しく、大変。
そりゃ、ストレスなく自然体のままカメラマンになれるなら、それに越したことはないと考えるのが自然です。
でも、ご存知でしょうか?
カメラマンアシスタントに就かずにカメラマンとして独立できるか、カメラマンアシスタントを経ていくべきか。その判断は、自分の気がすすむかどうかではなく、ある構図をわかっているかどうかで決めるべきだということを。
構図が見えているか
写真の構図の話ではありません。それはカメラマンとクライアントの関係性(構図)の話です。
自称写真作家だろうと何だろうと、写真を撮ることを仕事としてそれで生計を立てるなら、どのような形であれ自分にお金を出してくれるクライアント(やファンやパトロン)が必要不可欠です。
逆の視点からいえば、欲しい写真を撮ってくれるならお金を出しても構わないと考えているクライアントにとって、それを叶えてくれる写真家が必要不可欠なわけです。
カメラマンアシスタントを経ることなくカメラマンになる人は、この構図が見えています。
その構図とは、
① カメラマンに求められているものは何か
今の世の中やそのジャンル、ターゲットが求めているテイスト・切り口・クオリティーが客観的に見えている。
② それは具体的に誰が求めているのか
クライアントは雲の上の存在ではなく、目に見えるところにいて、連絡が取れて、話を聞いてもらえる関係にある。
③ それに対し、今の自分には何ができるのか
クライアントとの関係の中で、どのカメラマンを使うかという土俵に乗れるだけのクオリティーや信頼・実績がある。
スタジオスタッフをやっていれば多くの方がこの構図を「何となくはわかる」と思います。でも、「目に見える具体的な形になっている」ことが重要なのです。
直アシ(カメラマンアシスタント)は、撮影に関わるスキルやテクニックだけでなく、師匠の写真についての考え方や、仕事との関わり方、人間関係までもが得られる超恵まれたポジションです。学ぶ気持ちと、それなりの時間さえかければ、これら①②③を手に入れることがたやすい環境なのです。
直アシ経験を必要とする人、しない人
スタジオにいて、これからの身の振り方をどうするべきか、それは上記の構図①②③がどのくらい見えているかによって変わります。
A. これまでの環境や生活の中で、すでに①②③が具体的に見えている人
B. 何となくは見えていて、何をすればより鮮明にそれが見えるようになるかがわかっている人
C. ①②③の意味はわかるけど、「何となく」であって「具体的」ではない。この先、何年経っても見えるようになる気がしない人
A.とB.の人は、必ずしもカメラマンアシスタント経験を必要としません。ただ、B.の人ははっきり見えるようになるまでの時間がどのくらいかかるかわかりません。それを得るまで続けていく情熱や覚悟や事情がなくてはなりません。効率を考えたら、カメラマンアシスタントになるという選択肢も悪くはないと思います。
C.の人は、カメラマンアシスタント経験を経ることをおススメします。師匠という格好のお手本を間近に見て集中的に学び得るという選択肢です。
外苑スタジオのスタッフ
このスタジオのスタッフに限れば、常に精力的に作品撮りをしています。その作品は、スタジオのインスタやHP、個人のそれにアップされ、スタジオの壁にはプリントが貼られます。このスタジオでは、スタッフ各々が現時点での自分の写真のポテンシャルを肌で感じられる環境にあるということです。
その意味で、スタッフは3年も居れば、自分の今後の身の振り方が自ずと見えてくるものです。その身の振り方の選択肢は3つ。
① すでに仕事を依頼してきてくれるクライアントを突破口に独立するべくスタジオを卒業する準備をすすめる
② スタジオという便利な環境を活かして、完全独立までの助走路にスタジオをどのような形で利用していくかマネージャーと相談する
③ 身につけたアシスタントスキルを活かし、カメラマンアシスタント(直アシ)として自分が知らない視点や人間関係を得るために動く
ホリの上にも三年
他人の作品はカッコいいとか、イマイチだとか評価ができます。でも、不思議なことに多くの人が自分の作品のポテンシャルを客観的に見ることができません。
「自分を信じる」って言葉は、時にはとても大切です。でも、自分の作品の現時点での可能性については買いかぶり過ぎないように注意しなくてはなりません。
何よりも楽しく。ただし、若いうちは許容できる範囲で負荷がかかる道を選んだ方が良いと思います。気がすすむかどうかではなく、賢い負荷の選択をするべきなのです。
10年後に笑い飛ばせれば、そんなもの全部チャラですから。