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スタッフには内緒の話

僕にはこれまでスタッフに内緒にしてきたことがあります。でも、ここらで打ち明けてしまうことにします。まあ薄々気付いているスタッフもいると思いますし、、、OB&OGになればわかることではあるのですが。。。

「田辺さん、1stの制作の担当さん、やたらうちのスタジオのことに詳しいと思ったら外苑のOGの方でした。○○さんって田辺さん覚えてます?」

 

その日1stに入っていたスタッフNくんが、状況報告ついでに僕に聞いてきました。

 

「○○さん? あー、○○ちゃんだ!もちろん、知ってる!知ってる!」と、答えながら気付きました。

 

「あれ?1stのカメラマンって(OBの)Sくんだよね。外苑のOB&OGコラボじゃん、すごっ!」

 

その後、OBカメラマンとOG制作さんと僕の三人で近況報告や昔ばなしに盛り上がったことは言うまでもありません。気心知れた懐かしい人たちが元気にやっている姿を見るってしみじみ幸せで頼もしい気持ちになるものです。

 

やっぱり人は求められる存在になってこそ。少なくとも僕はそう考えるタイプの人間です。まだ一人では生きていけない赤ちゃんに求められるお母さんしかり。顧客やクライアントや企業からそのスキルやセンスやこだわりを求められるビジネスパーソンしかりです。

 

だから、昔アシスタントとしてこのスタジオで頑張っていた人が、数年の時を経て自分を確立しそれぞれが見い出した分野で活躍している姿を見るって、とても嬉しくて目を細めてしまうオジサンなのです。

そんな僕ですが、現役スタッフにはいつも「カメラマンになるために…」って話ばかりしています。ブツブツ愚痴っぽく言ってみたり、あえて小さな声で囁いたり、ど正面から論破したり。事あるごとにその時々のシチュエーションにインパクトある声色を使って言い続けています。

 

でも、正直に言うと、カメラマンになることがすべてだとは思っていません。ただ、スタジオスタッフをやっている今は、カメラマンになることに全力で頑張るべきだと考えています。

 

大切なことは、カメラマンに成れたか成れなかったかという結果ではありません。真剣に頑張る中でこそ、本当に自分がやりたいことがわかるからなのです。だから、スタジオスタッフである今はカメラマン目指して全力で頑張ることが大切だと信じているのです。

 

その結果が、バリバリ売れているカメラマンでも、悠々自適にやっているカメラマンでもいいのです。何ならプロデューサーさんでも、レタッチャーさんでも、プロフェッショナルなカメラマンアシスタントさんでも、庭師でも、革職人でもいいのです。

 

何より大切なことは、本来の自分を探し当て、それを生きること。

 

ちなみに、この内緒話をこれまでスタッフに秘密にしてきたのにはワケがあります。それは、“隣の芝生は青い”よろしくスタジオで思い通りにいかない人の中には、その理由を自分に求めることなく、環境のせいにばかりしてしまう人がいるから。そのクセがついてしまうと、どこにいっても結局隣の芝生ばかりが青く見える人になってしまいますから。

 

では、なぜ、今タネ明かしをするのかといえば、時代のせいか、ジェネレーションの違いか、今のスタッフはみんなしっかり地に足を付けてやっていると思えるから。日ごろの業務も、自分自身の写真と向き合うことも、しっかりマジメに取り組んでいるから。

 

やがて、やれる限りのことはやっている感の中で頑張り続けていたら、ある日突然「あっ、この道がいいじゃん」とカメラマンではない何かを見出す瞬間が訪れるかもしれません。その時はその感覚を信じてその道を突き進めばいいと思うのです。

そうやって、今から30年くらい前、僕はスタジオマネージャーの仕事と出会いました。

 

で、最近、思うのです。

 

もう少し、芝生青くてもいんじゃねって。

 

 

文:田辺 政一  え:きよた ちひろ

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