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スタッフが安定を求めるようになった理由

スマートな小粒

なんだかんだで27年。スタジオマネージャーという立場で時代時代の若い方々と触れ合ってきました。このスタジオでは、ほとんどのスタッフが23年で次なるステップへ移っていくので、僕にはこの四半世紀若い方々の変遷を定点観測してきた感があります。

そんな中、ここ10年くらいで若い人たちの性向が大きく変わってきたと思うことがあります。それは、「野蛮」や「やんちゃ」な人が姿を消し、「気」とか「器」の小さな人が増えたこと。

言い方を変えると、「よく言えばエネルギッシュ、悪く言えば無分別」な人がいなくなり、「よく言えばスマートで賢く、悪く言えば小粒で臆病」な人が多勢を占めるようになりました。

 

しかも、この傾向はここ数年とても顕著になっています。

 

それはなぜか?

 

僕はそこにネットやスマホの影響があると考えます。

 

スマホ依存のワナ

故スティーブ・ジョブズが初代iPhoneを発表したのは2007年。それから10数年が経ち、物心ついた頃にはすでにスマホがあった世代が若い世代の大半を占めるようになりました。特に2016年以降は、20代の方のスマホ利用率が94%以上で高止まりしています。

 

総務省(29年版)スマートフォン個人保有率推移より

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111110.html

 

インターネットの普及以前、わからないことに出くわせば、それは行動することでしか解決できませんでした。

誰かに聞くのが手っ取り早いのであれば、その情報を持っている誰かにコミュニケーションを試みる。やってみなければわからないことや、どうすれば良いのかまったくわからないことなら、ひとまずやってみてから考える。

それがスマホ、すなわちモバイルインターネットやSNSの普及により、会いたくもない人に緊張してまでコミュニケーションを取る必要はなくなりました。ネットで検索すれば多くのことを事前に詳しく知ることができるようになった結果、事前情報がないまま行動することへの不安に過敏になり、事前情報がないまま行動することに強くストレスを感じるようになりました。

そうやって、スマホに依存してきた結果スマートで賢く小粒で臆病な人が増えてきたのです。大学生が就活で求める企業志向が、ここ数年で「安定性」を強く求めるようになったのも、スマホへの依存が大きく影響していると思います。

 

マイナビ「2022年卒大学生就職意識調査」より

https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210426_8553/

 

やってみてから考えろ

もちろん、「小粒で臆病」が悪いというつもりはありません。「野蛮でやんちゃ」なのも「スマートで賢い」のも、その人の個性です。今の若い世代に「野蛮でやんちゃ」な上の世代を反面教師としたと言われれば何も言い返す言葉はありません。

ただ、その個性は、本来生まれ持った性質というより、薬物依存同様にスマホ依存している特異な状態でのそれだといえます。

故スティーブ・ジョブスは生前、自分の子供に対しiPhoneiPadの使用を厳しく制限していたそうです。きっと、それらへの依存が子供の精神的な成長に与える影響を考えてのことだったと思います。

彼を含め、ネット普及以前の者なら必ず知っている、「やってみてから考える」という認識手法は、ある意味ネットの革命的な利便性より優れたものです。それを知らないただの小粒な臆病者は憐れ以外の何ものでもありません。

僕のいるスタジオのスタッフは、スマホを使いこなしつつ、「やってみてから考える」ことの優位性を理解し、予備知識なく未知なるものへ飛び込むことにワクワクできる自分を構築すること。

緊急事態宣言も明けたことだし、まずは自分の父親と変わらない歳の田辺のオッサンと痛飲するという未知なる体験にチャレンジしてみよう! ワクワクしても、ゲロゲロしないようにご注意を。

 

 

 

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