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やりたい写真は海の向こう

 スタジオに勤めようとする方の中には、「まだ具体的にどうゆう分野の写真を自分がやりたいかはわからない。スタジオに入って、プロの現場を様々見ることで自分の進むべき方向を決めていきたい。」という方がいます。

そのために、第一線で活躍されている方々が集まるプロの現場でもまれたい、というその心意気は称賛されるべきかもしれません。

 

でも、あくまでも僕が知る限りではありますが、後々そのタイプの方が、自分の目指すべき方向性を見出せたという話を聞くことはほとんどありません。いずれは、どこかまったく違う分野に流れていく方が非常に多い気がします。

 たぶん、「やりたい分野」が明確にあって、この業界に入ってきた人なら、目指す目的地に向けて船を進めていけます。向かうべき先がどのくらい遠くて、どれほどの時間がかかるのかはわかりませんが、方角だけはわかるので、嵐がきても、逆風でも、横風に流されても行き先を見失うことはありません。

 

海を越えてみて、未知の世界に渡って初めて見える景色があります。行く先々で知る情報も、行かなければ知り得なかったものばかりです。本当に探し求めていた国は、行ったからこそ出会えるものです。

 

でも、自分の行先がまだ見えないという人は、港に行きかう舟を眺め、方々からやってくる船乗りから色々な話を聞いては、自分がどこへ行こうか決めあぐねます。聞けば聞くほど、どの海路にも、どの目的地にも一長一短があり、自分の今ある力でも行けそうで、幸せや成功が得られると確信の持てる国をなかなか見出すことができません。

そのため、僕は「自分がやりたい写真の分野がまだわからない」という方に対しては、何でもいいので「これっ!」ってジャンルを決めちゃった上で、この業界に飛び込んでくることをおススメしています。もちろん、決めたからには、全身全霊で一生懸命取り組まなければなりませんが。

 

真剣に取り組むからこそ見えてくるものがあります。覚悟を決めて本気でやるから、探していた答えと出会うことができるってもんです。

 

「でも、まだ自分にはその知識も技術もありません。」と仰いますか? それなら、なおさらもっと撮ってみてはいかがでしょう。撮らなきゃ、自分に足りない知識や技術が何なのかすらわかりません。

 

まだ上手には撮れないから、撮らない。ではなく、下手なりに撮ってみて、どこが下手なのかを見極め、見えてきた問題点を解決する。その繰り返しでしか写真って上手くなりません。

 やってみなくちゃわからないなら、やってみてから考える。無謀にもプロの現場に飛び込む勇気があるくらいなら、その前に撮って撮って撮りまくって、下手でもいいから自分がやりたい方向を見出す勇気を持つべきです。

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