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宗一郎とスティーブ
その行動がどのような結果をもたらすか想像がつかない時、
A:「事前にしっかり調べて、そのメリットや成功率を分析しつつ、仮にやってみた時のことをイメージし、その結果で行動するかどうかを判断する」
B:「とりあえず、やってみてから考える」
自分はどちらのタイプかと問われても、もちろん答えは時と場合によります。それでも、人は色々ですから、比較的AやBが多いという人もいれば、ほとんどA(またはB)という方もいます。
物心ついた時から身近にネット環境のあった最近の若い方は、比較的Aよりの人が多いようです。僕のように面の皮の厚いおっさんになってしまえば別ですが、若い頃ってナイーブなのでなお更Aよりになりがちです。
普通の方ならこれで全然いいんです(今風)。でも、「自分はフォトグラファーになりたい」とか、それだけは絶対に譲れない何かを持つ人に限ると、その部分においては絶対にB「とりあえず、やってみてから考える」で貫き通すべきなのをご存知でしょうか?
僕は10代の一時期、本気で「アルピニスト(登山家)」になろうと考えていました。20代は、カメラマンのアシスタントを経て真面目に自分の撮影で食いつないでいる時期がありました。
ご存知の通り、今はそのどちらも職業にしていません。それぞれ、真剣にそれを追い求めていた時期はありましたが、ある頃から何となくそれではない何かに心が向くように変わっていったからです。
その境は何か、考えてみたら、どちらもある時点から、何か次の一歩を踏み出すにあたり、上手くいくかどうかを考えるようになっていたのです。要するに僕は失敗を恐れるようになっていました。
その時は気付きませんでしたが、今振り返えればその辺りから僕はその道を離れる方向に進み始めていたのです。
それらと比べれば、当初腰掛程度にしか考えていなかった僕にとっての「撮影スタジオのマネージメント」は違いました。何も考えずにやってみたら、まったく上手くいかず、悔しいから工夫して改善してやり直しました。
でも、やり進めればやり進めるほどに、あちらこちらに問題が発生、その都度修正や工夫や改善を試み、気付いたら24年。今では、僕からこの仕事を取ったらほとんど何も残らないくらい、どっぷり浸かっています。
他人から見れば、それこそが「僕に一番向いていたこと」となるのでしょうが、僕にそんな自覚はありません。そもそも、僕の若い頃イメージしていた“働く僕”はもっとオシャレでクールでスタイリッシュでしたから。
少なくとも、スタッフから「田辺さん、大変です。トイレが詰まって流れません。」と言われ、ゴムのカポカポするやつ持ってトイレに走っていく自分の姿など、想像もしませんでした。
失敗した時のショックを恐れて、事前に色々考えずにはいられないということは、裏を返せば自分にとってのそれは人生賭けるに値するほどのことではないということです。だって、それでは「上手くいった」ところで、傷付かずに済んだところで、「実力」にはなりませんし、先にも進めませんから。
自分が本当にやりたいことなら、どんなことだろうとやってみてから考えるべきです。恥も失敗も良い経験、良い学びなのです。
と、書いてはきたものの、僕の体験じゃやっぱり説得力がありません。ここは一つ、宗一郎とスティーブにご登場願おうじゃありませんか。
『人生は「見たり」「聞いたり」「試したり」の3つの知恵でまとまっているが、多くの人は「見たり」「聞いたり」ばかりで一番重要な「試したり」をほとんどしない。ありふれたことだが失敗と成功は裏腹になっている。みんな失敗を恐れるから成功のチャンスも少ない。』
(本田技研工業創業者 本田宗一郎)
『Stay hungry, stay foolish』