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カメラマンアシスタント(直アシ編)
【はじめに】
僕のいるスタジオをご利用いただく現役のフォトグラファーをアットランダムに100人選び、その経歴を調べてみたことがあります。カメラマンアシスタント(プロダクションを含む)を経てフォトグラファーとなった人は64%もいました。
意外でしたが、誰に就くこともなくインスタ等からカメラマンになったという方は、9%しかいませんでした。昔も今もカメラマンアシスタントはフォトグラファーを目指す人の王道なのです。
ただし、多くの方がカメラマンアシスタントになろうとする分、結果的にはカメラマンアシスタント止まりの人が少なくないのも事実です。
そこで、僕のこれまでの経験や見聞きしてきたことから「カメラマンアシスタント(以下、直アシ※)」になる上でのメリット・デメリットや注意点を書いてみます。これからカメラマンアシスタントになろうと考えている方の参考になれば幸いです。
※:カメラマンアシスタントには、日雇いでアシスタントサービスを提供する「ロケアシ」と、専属でその師匠個人に就く「直アシ」や、制作会社等フォトグラファーが所属しているプロダクションのアシスタントがあります。「ロケアシ」については過去ブログ【直アシかロケアシか】をご参照ください。
もくじ
・ はじめに
・ 直アシはカメラマンを学べる最高のポジション
・ 就きたい師匠に就けるとは限らない
・ 天国と地獄
・ スタジオに勤めるメリット
・ 仕事は出来るに越したことはないけれど
・ 意気投合とか相思相愛に要注意
・ アシスタントスキルの他に大切なもの
・ あとがき
【直アシはカメラマンを学べる最高のポジション】
自分の半径2m以内のところで、師匠は仕事の依頼を受け、打ち合わせを経て準備から撮影本番に挑み、後処理から納品、請求までが行われます。そのような仕事の流れはもちろんのこと、師匠の一挙手一投足、目線、言葉の間から息遣いまで、学ぶ側に学び取る意識さえ出来ていればこれほど恵まれた環境はありません。
【就きたい師匠に就けるとは限らない】
そのカメラマン(師匠)がアシスタントに求める仕事の質や量は、師匠によってまちまちです。初心者にも丁寧に教えてくれる人もいれば、最初からある程度のアシスタントスキルやレタッチ技術&センスを求める人もいます。一般的に、アシスタントのなり手の多い師匠ほど、アシスタントに求めるレベルは高く、雇用条件は厳しい傾向にあります。
【天国と地獄】
師匠にもよりますが、長年就いてくれたアシスタントがカメラマンデビューするにあたり、そのフォローやバックアップをしてくれる人もいます。師匠自らクライアントに紹介してくれたり、機材などを譲ってくれたり貸してくれたりする人も。
逆に、独立後の営業(フォトグラファーとしての活動)はアシスタント本人の自己責任でと完全に分け隔てている師匠もいます。営業に関するスタンスや考え方の違いであり、どちらが良いとか悪いということではありません。
ただし、どちらの師匠も仕事の出来ないアシスタントは、辞めてもらうべく体よく促したり、スパッとクビにすることが普通にあります。プロの世界ですから当然のことです。
【スタジオに勤めるメリット】
アシスタントスキルを高める上においてスタジオに勤務することは有効な手段です。実際にそれを条件としている直アシ募集もあります。また、スタジオに勤務しているからこそ入る情報(その多くはネット上にはない)の中には、自分が誰に就くべきかを判断するための材料となるものも多々あります。
【仕事は出来るに越したことはないけれど】
当然のことですが、カメラマンアシスタントとして仕事が出来る人は師匠から重宝がられます。ただし、アシスタントの仕事が出来ることと、独立後カメラマンとして売れる能力は別物だということに注意が必要です。アシスタントとして有能だった人がすべてカメラマンとしても有能だというわけではないことは紛れもない事実ですから。
もちろん、重宝がられた人の方が師匠からの寵愛を受ける分、その関係性がクライアントへの良いアピールにはなります(あのアシスタントは師匠の○○さんから信頼されているから、カメラマンとしても間違いないんだろうと思われる)。カメラマンデビューを図る上で、そのイメージが有利に働くことは間違いありません。その後は、良い仕事(良い写真)が出来るか否かではありますが。
ある師匠が以前言っていました。「(直アシが)アシスタントのときは仕事の出来る人の方がありがたいけど、(カメラマン)デビューした後は写真の上手い人の方がありがたいよ。その人が売れれば(師匠である)オレの株が上がるからね。」
【意気投合とか相思相愛に要注意】
カメラマンから気に入られて、ホメられて、「人としてその師匠を尊敬」して直アシに就いた人の多くが、半年~1年くらいで辞めたり消えたり飛んだりします。特に普段から人にホメられたり認められることを切望している人や、自己肯定感の低い人は注意が必要です。カメラマンの中には意図せず人たらし能力に秀でた人も多くいます。素人なアシスタント、特に「師匠を人として尊敬してしまうような人」は、自分の甘さや不出来に愛と許容を求めがちです。しかし、プロの世界で生きる師匠にはそれを理解する気持ちも義務もありません。その結果、「師匠を人として信頼出来なくなった」というお門違いな理由で直アシを辞めていくのです。それは、アシスタントのプロ意識の低さと甘え以外の何ものでもありません。
【アシスタントスキルの他に大切なもの】
カメラマンに限ることではありませんが、世の中のアシスタントには、礼儀などの社会性やコミュニケーション能力が求められます。また、空気が読めるだけでなく、さりげない気配りや心意気によって現場の空気に良い流れを与えられるかどうかも大切な要素です。
直アシになりたい人が誰かの直アシ募集に応募すると、カメラマンに「今度、ロケアシに来てみて」と言われることがあります。その日の撮影が終わり、カメラマンから「お疲れ様。じゃーまた連絡するから」と言われて帰ります。すると、その日の撮影現場に居合わせたスタイリストさんやヘア&メイクさん、事務所のマネージャー、その他多くの関係者が、今日来ていたアシスタントを採るべきか否か率直な意見をカメラマンに言ってくることがあります。カメラマンも仕事仲間との関係性の中で、その意見や意向は尊重します。
「自分としては仕事もソツなくやっていたし(採ることに)特に問題はないと思っていたけど、スタイリストの○○さんが『今日のあの子は絶対やめた方がいい』って言うから・・・」断ったという話を僕は一度や二度ではなく耳にしてきました。
【あとがき】
他にもこのカメラマンアシスタント(直アシ)についてお伝えできる話はたくさんあります。ただ、すでに文字数はいつもの3倍3000文字になってしましました。これ以上の詳しいことは、スタジオで定期開催しているスタコン!にご参加頂き、ご質問して頂ければと思います。
文:田辺 政一 え:きよた ちひろ